子どもの虫歯と予防

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虫歯の予防

生えたらすぐに歯磨きを
乳歯は通常、生後6~7ヶ月ごろに、下の前歯から生え始めます。歯が生え始めたら、すぐに予防対策を始めるようにしましょう。
乳歯は永久歯に比べ、歯の表面を覆っているエナメル質が薄く、虫歯になりやすいうえに、虫歯になると進行が早いのが特徴です。エナメル質を形成しているのはハイドロキシアパタイトという物質の結晶です。生えたばかりの乳歯では、この結晶がまだ十分にできあがっていないので、エナメル質が完成していません。
乳歯は生えてから2年くらいかかって、唾液や食べ物からリンやカルシウムを徐々に とり入れ、強くなっていきます。ですから、特にエナメル質が弱い生えたての乳歯は、わずかな酸でもすぐに虫歯になってしまいます。また、唾液がよく出る子どもさんは虫歯になりにくようです。
虫歯がないかチェックするよりも、まず虫歯にならないように予防することが大切です。

ミュータンス菌の母子感染を防ぐ
乳歯の虫歯の大きな原因となるミュータンス連鎖球菌が口の中にいたのでは、完全に虫歯を予防することは難しくなります。虫歯を根本的になくすためには、ミュータンス連鎖球菌を排除する必要があります。
ミュータンス連鎖球菌は生後まもなくから子どもの口中にすみつく常在菌ではなく、子どもの育つ過程で、主に母親から感染します。食事の際の箸やスプーン、コップなどの共有や、親子の接触から唾液を通して感染していきます。子どもが接する親がミュータンス連鎖球菌をもっていなければ、通常は子どもの 口内にもみつかりません。
ミュータンス連鎖球菌に感染する危険が最も大きいのは、奥歯が生えそろう1歳7ヶ月ころから2歳7ヶ月ころまでの1年間といわれ、この間に感染しなければ、その後は比較的感染しにくいとされています。そのためこの時期に親がしっかり 感染を予防すれば、将来虫歯に悩まされる確率は非常に低くなります。
感染予防法としては、母親自身がミュータンス連鎖球菌の温床となっている虫歯を治し、非水溶性グルカンによるプラークを落とすPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・ トゥース・クリーニング)を歯科で定期的に受けると効果的です。
そのほか、箸やスプーンを子どもと共有しない、食事を口移しで与えない、食べかけの食品を与えないなどの注意も必要です。また、天然素材甘味料の キシリトールもミュータンス連鎖球菌を減らす効果があるといわれています。
なお、口内にミュータンス連鎖球菌がいるかどうかは、歯科で唾液を調べてもらえばわかります。

歯磨きを正しく
子どもの歯磨きは乳歯が生え始めたらすぐにスタートし、小学校低学年ころまでは、磨き残しを親がチェックしてカバーする必要があります。食後に水を飲ませてガーゼで 拭くくらいでは、歯についた歯垢はなかなか落ちません。

[歯ブラシの選び方]
きちんと歯磨きをするためには、子どもの口の大きさに合わせて、適切な歯ブラシを選ぶ 必要があります。柄はまっすぐで、ブラシ部分は弾力があって幅が広く、毛足が短くて毛先が 丸めてあるものが理想です。毛先がとがっていたり、毛足が長すぎると歯茎を傷めます。ブラシ部分の長さは下の前歯の3本分くらいのものを選びます。
歯ブラシの背側から毛足がはみ出して見えるほど開いたブラシは、汚れがとれず、歯茎を傷める原因にもなりますから、新しい物に交換しましょう。

[フッ素入りのハミガキを]
フッ素を歯につけると、歯の表面でフルオロアパタイトという酸に強い結晶となって、エナメル質を強化します。特に生え始めの歯はエナメル質が未完成なので、フッ素が沈着しやすいという特徴があります。
日常的にはフッ素入りのハミガキを使い、さらに歯科でフッ素を塗布してもらうと 有効といわれています。乳歯の生え始めから、少量のフッ素入りハミガキを使って 歯を磨く習慣をつけていくと、虫歯の予防になります。ただし、フッ素の塗布だけで 虫歯が防げるわけではありません。歯磨きや食生活に気を配ることが デンタルケアの基本です。

[前歯が生えた頃の磨き方]
6ヶ月から1歳すぎくらいまでに前歯が生えます。親は子どもを横抱きするか、膝の上に寝かせて、歯を磨いてあげましょう。
乾いたままの歯ブラシに、ごま1粒くらいのハミガキをつけます。水をつけてしまうと、ブラシのこしが弱くなり、ハミガキが泡立ちすぎて磨きにくくなります。歯ブラシの毛先を歯の面に直角にあてて、小刻みに動かします。力を入れてゴシゴシすると、歯や歯茎を傷つけますし、子どもは痛がって歯磨き嫌いに なるかもしれません。
自分の手の甲にブラシをあててみて、気持ちよいと感じる程度の強さで十分です。
150g程度の力が適切ですから、キッチンスケールにあてて一度確かめてみましょう。
まだ自分でゆすぎができないうちは、歯磨きの後に清潔なガーゼで歯をふきます。

[乳歯が生えそろうころの磨き方]
1歳半ころに奥歯が生え始め、2歳半くらいになると乳歯が生えそろいます。子どもが自分で歯磨きをしたがるようになったら、子ども専用の歯ブラシを用意し 持たせてあげます。
歯磨きは、親の膝の上に子どもの頭をのせてあおむけに寝かせ、口の中をよく見ながら 磨いてあげます。磨き方の基本は変わりませんが、ハミガキは子どもの爪の厚さくらいの量にし、奥歯は噛み合せ部分の溝をかき出すように磨きます。奥歯の間の歯と歯のすき間は歯ブラシでは届きません。子ども用のデンタルフロスを 用意し、歯茎に接触しないように1~2回上下させます。
うがいができるようになったら、仕上げ磨きの後には口をゆすがせます。ハミガキのフッ素を全部落としてしまわないように、うがいの水はコップに1cmくらいにし、長めに1回ゆすがせればよいでしょう。
歯磨きは毎食後行うのが理想的ですが、なかなか難しいものです。毎回は無理でも、夜には1回5~10分くらいかけて、丹念に磨きます。
幼児期からは、子どもが自分で磨けるように練習していく必要もあります。まず子どもに自分で磨かせ、仕上げは親がしっかりカバーするようにして、次第に歯磨きに慣れさせていきましょう。

食事とおやつの与え方
虫歯ができるのは、口の中が酸性になっている場合です。食べ物を食べれば口の中は 酸性に傾きますが、しばらくたてば唾液の働きで中性に戻ります。しかし、食事やおやつをダラダラと食べ続けていれば、いつまでも口の中は酸性のままで、非常に虫歯ができやすくなってしまいます。
1歳を過ぎても、子どもを寝かしつけるために、いつまでも哺乳瓶でミルクを与えると、上の前歯の裏側がズラリと虫歯になってしまいます。これを哺乳瓶虫歯(ボトルカリエス)といい、常に糖分が口の中になる場合の典型的な症状で、絶対にやめさせたい習慣です。哺乳瓶だけでなく、寝ながら乳首をくわえて母乳を吸うのも同じ結果を招きます。ミルクや母乳を含め、食事は規則正しく与えることが大切です。
おやつについては、乳歯は虫歯になりやすいので甘いものを一切与えないという 考え方もあります。しかし、それでは子どもの楽しみを奪ってしまうことになります。そこで与え方に工夫をし、口の中が酸性になる時間を少なくするために、酸のもととなる甘いものは、食事に続いてデザートとしてとるようにします。
乳児の栄養補給や、腹もちをよくするために間食と与える場合は、糖分の多い お菓子ではなく、口内を酸性にしないチーズ、ナッツ、季節の野菜、お茶などにしましょう。

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