風邪(かぜ)を引き起こす主なウイルス

主な風邪のウイルス主な特徴
ライノウイルス風邪の原因の約30~40%を占めるのがこのウイルス。秋や春に多く、主に鼻風邪を引き起こす。
コロナウイルスライノウイルスの次に多く、主に冬に流行する。鼻やのどの症状を起こし症状は軽い。
 ヘルパンギーナコクサッキーウイルスが原因となって起こる疾患である。手足口病と同様、夏を中心に乳児や幼児に流行し、いわゆる夏かぜの代表的疾患。
手足口病 コクサッキーウイルスが原因となって起こる疾患である。夏を中心に乳児や幼児に流行し、口の中や手足に発疹(ほっしん)が現れる。
アデノウイルス冬から夏にかけて多い。プール熱の原因もこのウイルス。咽頭炎や気管支炎、結膜炎なども起こす。
RSウイルス年間通じて流行するが冬に多い。乳幼児に感染すると気管支炎や肺炎を起こす場合がある。
ヒトメタニューモウイルス年間通じて流行しますが、特に3月〜6月の春に多くなる傾向があります。症状としてはRSウイルスと似ています。
パラインフルエンザウイルス鼻やのどの風邪を起こすウイルスで、子供に感染すると大人より重症になりやすい。秋に流行する型と春~夏に流行する型がある。
エンテロウイルス夏に流行するウイルス。風邪の症状のほか下痢を起こしたりする。
インフルエンザインフルエンザウイルスによっておこる感染症で、その感染力の強さから学校で集団感染し、合併症による幼児や高齢者の死亡例もあり、

単に風邪と片付けられない注意すべき感染症です。

 

年齢が低い子供ほど抵抗力が弱く、身体機能が未熟であるため、風邪をひく回数は多くなります。保育園や幼稚園などの集団生活施設で、風邪をひいている子供の咳やくしゃみを経由して感染することもあります。またウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり又はなめたりすることによる間接的な接触感染で感染します。

(風邪で「のどが痛い」という時、その大部分はウイルスに感染して“のど”に炎症を起こしている状態ですが、ウイルスではなく「細菌」感染によるものは溶連菌が重要です。溶連菌感染症に関する詳細はこちらをクリックしてください)

風邪(かぜ)の治療

対症療法が主体になり、発熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を用います。喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては鎮咳去痰薬や気管支拡張薬などを用います。脱水気味になると、喀痰が粘って吐き出すのが困難になるので、水分の補給に努めます。
ウイルスには抗菌薬は効きません。最初から抗菌薬を使って予防するのは難しいことがわかっています。ですから、風邪に抗生薬を使うのは、効果がないばかりか、抗生剤による副作用を増やすだけです。ただし、風邪に引き続いて二次的に細菌感染を起こし、子どもでは細菌性の中耳炎や副鼻腔炎(蓄膿)を起こすこともあります。そのため、風邪はたいてい3日以内によくなりますが、3日以内によくならなかったら、もう一度受診しましょう。耳を気にしたり、黄色(緑色)の鼻水が出たり、咳が止まらなかったりした場合は、細菌性の中耳炎、副鼻腔炎(蓄膿)や肺炎の可能性があるため、抗生薬が必要になることもあります。抗生剤が必要な場合、こちらから理由をしっかり説明し、抗生剤を処方いたします。

こどもに多い3種類の夏風邪

夏かぜの原因は、暑さや湿気を好むウイルスです。子どもに多く見られるのは、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱(咽頭結膜熱、アデノウィルス感染症)の3種類です。

ヘルパンギーナ

おもにコクサッキーA群ウイルスの感染によって起こり、感染した人のだ液や排泄物などからうつります。多くは「38-39℃の高熱」と「のどの痛み」が主な症状です。
38~39度の高熱が出て、ほぼ同時に、のどの奥などに赤く小さな水疱が数個~十数個できます。水疱がつぶれると痛むため、食事や水分をとりにくくなることがあります。熱は1~3日で下がり、のどの痛みも1週間ほどで治まります。熱がなく、のどの痛みがなければ登校 ( 園 )は可能です。 

手足口病

手足口病ではその名の通りに手や足などの全身に皮疹が出ることが特徴です。「ヘルパンギーナ」と診断されても、後になってから手足に皮疹が出てきたために、「手足口病」と診断名が変わることも少なくありません。コクサッキーウイルスやエンテロウイルスの感染によって起こり、感染した人のだ液や、水疱の中身などからうつります。主な症状は、手のひらや足の裏、口の中などにできる米粒ぐらいの水疱(肘やひざ、おしりなどにできることもある)。熱が出ることもありますが高熱ではないことが多く、1~2日で下がることがほとんどです。熱がなく、のどの痛みがなければ登園は可能です。

アデノウィルス感染症
(プール熱、咽頭結膜熱)

アデノウイルスの感染によって起こり、感染した人のだ液や目やになどからうつります。プールの水を介してうつることもあるため、「プール熱」とも呼ばれます。39~40度の高熱が出て、ほぼ同時にのどの腫れや目の充血が見られます。目の症状はまず片方から始まり、その後、もう片方にも現れます。症状は1週間ほどで治まりますが、おもな症状がなくなってから2日過ぎるまで、登校 ( 園 )はできません。

夏風邪対処法

ウイルスが原因の夏かぜの場合、治療は対症療法しかありまえん。夏風邪を引き起こすウイルスは口の中やのどを痛めることが多いため、食事する場合、ゼリー状のもの、うどんやそうめんなど冷たくてのどごしのよいもの、冷たいスープや冷ましたみそ汁などを少しずつこまめに与えましょう。飲み物はストローを使うと飲みやすいこともあります。飲んだり食べたりするのをいやがることがある場合、もっとも注意しなければならないのが脱水の予防です。食事は無理にとらなくても構いませんが、水分はほしがらなくてもこまめにとらせます。水分補給には水や麦茶など甘くないものが適していますが、食事がとれない場合は、糖やナトリウムを補給することができる子ども用の経口補水液を利用するとよいでしょう。

これらの夏風邪は、大人ではあまり見られませんが、罹患したお子さんのいる家庭では、免疫力の低下した大人にうつることもあります。ヘルパンギーナの子供さんを看病したお父さん・お母さんや、ご高齢の方、免疫力を低下させる薬剤(ステロイドなど)を内服中の方は、要注意です。

こどもに多い2種類の冬風邪

冬かぜの原因は、夏かぜと正反対で低温で乾燥した環境を好むウイルスです。子どもに多く見られるのは、インフルエンザウイルス 、RSウイルス、ライノウイルス 、コロナウイルスなどいろいろありますが、その中で特に注意しなければならないのはインフルエンザとRSウイルスでしょう。

インフルエンザ

冬になると良く耳にするのが「インフルエンザ」です。「インフルエンザ」はインフルエンザウイルスによっておこる感染症で、その感染力の強さから学校で集団感染し、合併症による幼児や高齢者の死亡例もあり、単に「かぜ」とかたづけられない注意すべきウイルス感染症です。インフルエンザの特徴的な症状を知っておき、以下のチェック項目に多くあてはまる症状がみられた場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

  • 発熱と悪寒
  • 関節や筋肉が痛い
  • 倦怠感や疲労感がある
  • 寝込んでしまうほど辛い
  • 頭痛がする
  • せきや鼻みずの症状が次第に強くなる

上記のような症状がある、特に高齢者や幼児の場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

診断

鼻やのどから粘液を採取し、インフルエンザウイルスをその場で判定できる検査もあります(迅速検査キット)。急激な発熱などの症状が出ると慌てて病院に行く人は多いと思います。しかし、この時点で検査をしても、ウイルス量が足りないため、正確な結果な出ないことがあります。症状が出てから12~24時間程度経過してから検査を受けるほうがベターだと考えます。

治療

検査でインフルエンザが確認できたら、抗インフルエンザ薬を使用することで、インフルエンザウイルスの増殖を抑えて、症状を軽減する効果があります。薬の使用が早ければ早いほど効果があります。発熱などの症状が出てから48時間以内に抗ウイルス薬を服用すると症状が早く改善されます。ただし、薬の効果を過信せず、安静にして無理をしないことも大切です。
最近ではいろいろ抗ウイルス薬が処方されるようになりましたが、薬があるからといっても、インフルエンザにはかからないのが一番です。「ワクチン接種」で感染の防止と症状を軽くする効果を期待できます。小さいお子さんや高齢者のいるご家庭では、インフルエンザウイルスを持ち込む可能性のある人も一緒にワクチンの接種を受けるとよいでしょう。