嘔吐下痢症

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乳幼児嘔吐下痢症とは
ウイルスによる胃腸炎で、だいたい突然の嘔吐で発症します。うつります。冬期下痢症とも呼ばれます。
2~15回嘔吐し、同時か少し後から下痢が始まります。いつもより酸っぱいにおいの黄色か白っぽい水様便(クリーム色)、ひどいときには米のとぎ汁のような便になることもあります。熱も出ることがあります。
下痢は3~10数回になります。下痢の期間は長く続き一週間くらいかかることもあります。問題は脱水症です。嘔吐や下痢で体内の水分とともに消化液を失うと塩分など(電解質)体液が失われるからです。その前に適切な治療をしましょう。嘔吐の仕方には2パターンあってまとめて何時間かの間にどーっと吐いてしまうタイプと毎日1~2回ずつ位吐くタイプがあります。毎日少しずつ吐くタイプは3日ほど続きますが、あまり脱水になることはありません。
ウイルスは何種類もあり、最も代表的なウイルスがロタウイルスとノロウイルスいうウイルスです。ロタウイルスが症状がもっとも強く、便が白っぽくなる傾向が強く下痢も長びきます。ロタウイルスの潜伏期は1~2日といわれています。新生児では無症状かごく軽症で、年長児や成人では症状がでないことが一般的です。ロタウイルスは診断キットがあるので早めに確認できます。
その他のウイルスではアストロウイルス、腸管アデノウイルスなどが原因ウイルスとしてあげられます。

治療
嘔吐する時間は数時間から約一日程度です。必ず止まってきます。嘔吐止め(主に座薬)を使用し嘔吐が止まるのを待ちます。この間、水分も与えません。絶食が最もよいのです。(この時期は与えても吐くだけですから。)吐き気が止まり、飲めそうになったらスプーンで小量ずつ、お茶、アクアライト、ポカリスエット、塩分で味付けしたコンソメスープ、あめゆなどを交互に与えます。みかんやリンゴのしぼり汁もよいでしょう。これで嘔吐がなければこれからどんどん吐くということはなくなります。こうすれば脱水症を防ぐことができます。
しかし、吐き続けたり、下痢がひどくほとんど水分も十分に取れない場合には点滴をします。ほとんどの場合200~500ccほどの点滴で良くなりますが、ひどい場合は入院が必要になることもあります。
嘔吐が軽い場合はOS-1,アクアライトORSなどの経口補水液、あるいはみそ汁やリンゴジュースなど与えていきます。
これらは脱水を予防するために開発されたものですが、かなり塩分の濃度が高く、しょっぱい感じがしますが、脱水気味の子は飲むことができるようです。ポカリスウェットやアクアライトは塩分の濃度が低いのであまりお勧めしていません。
逆に嘔吐もなく、下痢もなく、普通の硬さで便が白くなるだけのこともありますが、この場合はほとんど治療は必要ありません。

食事の与え方
嘔吐が止まり、下痢の回数が減り、水様から泥状へと便性が好転するにつれて、うすめたミルク、重湯、三分がゆ、ポタージュも与えることができます。
便と同じ軟らかさのものをたべさせるとよいでしょう。
おかゆ、白身の魚、よく煮たうどん、軟らかい食パンなどよいでしょう。

《食べていけないもの》
乳製品、冷たいもの、油もの、糖分の多いもの、生野菜など繊維の多いもの
卵や豆腐などは便が固くなれば与えてよろしい。
◎下痢が治まると、すぐに体重は回復します。栄養は控え目でも早く下痢をなおすようにしましょう。下痢が長びくときは乳糖不耐症のことがありますのでご相談ください。

おふろ
下痢がひどく、元気のないときだけ中止します。おしりはお湯でよく洗ってやります。


ノロウイルス感染症

ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス(Norovirus)は、急性胃腸炎を引き起こすウイルスのひとつです。現在食中毒の病原体のなかで3番目に多いといわれています。小児の冬に流行する感染性胃腸炎ではロタウイルスに次いで2番目に多いと言われています。
カキなどの貝類による食中毒を起こし、また感染者の下痢便や嘔吐物から人から人へ経口感染するといわれています。度々集団感染を起こし、世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生しています。
1968年、米国オハイオ州ノーウォークの小学校において集団発生した急性胃腸炎の便からウイルスが発見され、その地名から「ノーウォークウイルス(Norwalkvirus)」と名づけられました。この後、このノーウォークウイルスとよく似た形態のウイルスによる胃腸炎や食中毒の例が、世界各地で報告されてきました。これらは、そのウイルス粒子を電子顕微鏡での形態から小型球形ウイルス(SmallRound-StructuredVirus,SRSV)とも呼ばれ、カリシウイルスという科に分類されました。
その後、ノーウォーク様ウイルスと呼ばれていたものを「ノロウイルス属(Norovirus)」、と呼ばれるようになりました。1977年、同じような胃腸炎が札幌からも発生し、サッポロウイルス(Sapporovirus)からサポウイルスと名付けられました。

症状
24-48時間の潜伏期間の後、急性胃腸炎の症状が現れます。嘔気、嘔吐、下痢、腹痛が見られ、発熱を伴うこともあります。これらの症状は通常、1、2日で治癒し、後遺症が残ることはありません。小児では嘔吐の回数が多く、下痢も長びく傾向があります。ただし免疫力の低下した老人では、死亡した例も報告されています。
また感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や、風邪と同様の症状が現れるのみの場合があり、これらの人でもウイルスによる感染は成立しており、糞便中にはウイルス粒子が排出されるといわれています。

感染
感染の成立はカキなどの生食およびウイルスで汚染された食品を食べることにより発生する場合と、感染した患者の下利便や嘔吐物に排出されたウイルスから経口感染する場合とがあります。
ノロウイルスによる食中毒は、カキやアサリ、シジミなどの二枚貝によるものが最も多いと言われています。感染者は12月から3月が多く、カキを食べる機会が増えてくるのと関係があるようです。
人から人への感染は糞口感染が原因のようです。ノロウイルスはヒトの腸壁細胞に感染して増殖し、新しく複製したウイルス粒子が腸管内に放出されます。ウイルス粒子は感染者の糞便とともに排出され、また嘔吐物にも排出されます。糞便や嘔吐物がごくわずかに混入した飲食物を摂取したり、汚物を処理したときに少数のウイルス粒子(10個程度)が手指や衣服、器物などに付着し、そこから食品などを介して再び経口的に感染するといわれています。発病した人はもちろん、不顕性感染に終わったり胃腸症状が現れなかった人でも、無症候性キャリアとして感染源になる場合があり、食品取り扱い時には十分な注意が必要です。

診断
ノロウイルスは、その培養(増殖)方法がまだ見つかっていないため、糞便中のウイルス粒子を直接見ていましたが、ELISA法や、ノーウォークウイルスの遺伝子配列を元にしたRT-PCR法も開発され、診断に用いられるようになりました。またEIAキットも開発されてきていますが、今のところ手軽に診療所レベルでできるものはまだありません。

治療
ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬はありません。小児では嘔吐や下痢が頻回にある場合には脱水を起こしやすいので経口補液なども行い水分を十分に与えます。嘔吐や下痢がひどく脱水を起こした場合には輸液を行います。強い下痢止めは使いません。

感染予防
感染力は強く急速に広がるので、保育園、幼稚園、あるいは老人などの施設では以下のような特別な注意が必要です。
ノロウイルスはエンベロープを持たないウイルスであるため、逆性石けん(塩化ベンザルコニウム)、消毒用エタノールには抵抗性が強く、手洗いによって機械的に洗い流すことが重要です。

  1. 頻回な手洗いなど衛生管理を徹底します。食事の前、用意をするときとトイレやおむつを替えた後の処理が重要です。果物や野菜もきちんと洗います。ノロウイルスは加熱によって感染性を失うためカキは十分加熱して食べましょう。また生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いないよう、調理器具をよく洗浄・消毒しましょう。
  2. 汚物を処理するときには使い捨ての手袋とマスクを使用する。汚染した床などは消毒薬に浸すようにして拭き取り、汚染したおむつも揺らさずすぐにビニール袋に入れてしっかりと封をします。
  3. 感染者は症状がある間および、回復後3日までは調理をしないようにしましょう。老人の施設ではノロウイルスの主たる感染経路は、カキなどの貝類(食中毒)と、糞便や嘔吐物からヒトの手指などを経て口から入るもの(感染者からの伝染)であるため、特に飲食物を扱う人が十分に注意を払わなければなりません。特に調理者が十分に手洗いすること、そして調理器具を衛生的に保つことが重要です。
  4. ウイルス粒子の感染性を奪うには次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)などの消毒や85℃以上で数分間加熱することが有効です。

★ノロウイルスは、症状が消失した後も1週間はウイルスが排出されますので注意が必要です。

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